その0・消え行くは幻想の彼方


 世の中には歴史があって、歴史があれば深いものも浅いものもあるのは当然と言うもの。
 どこの町にも深い歴史を持つ場所や家と言うのは一つくらいあるもので、その場所もそのうちの一つだった。
 歴史と一口に言っても、実はなかなか馬鹿に出来たものではないものも結構あったりする。特に、世間的に有名だったりしないものと言うのは数多くあるけれど、それが全くの本当に無名と言うわけではないものだったりする事もあったり無かったりする。
 今でこそ数は少なくなったが、希少価値と言うものが存続する中。どうしたって持ち上げられるものや家と言うのは存在するものであり、悪気があるのかないかはともかく、やはりそう言う家は存在する。
 まさしく、他人事であるからこそ躍起になれると言うものであり。実際には当事者、特に年齢を重ねていない若者とすら呼べない者には、意味も理解も求める方が申し訳ないと言うのが本当の所だろう。

「どうしよう、信じてくれないよ……」

 子供達が、数人。いる。
 まだ若い人々の連れてきた、親戚でありなく、同士でありなく、友と呼べるものでもない者達。親達がいかにつながりがあろうと、子供達には子供達の世界がきちんと存在する事を、年齢を重ねてゆくごとに忘れてゆくのは何故なのだろうか?

「なにか、困ることでもあるの?」
「ええと……何か困るかなあ?」
「さあ?」
「ええっ! 困らないの?」
「じゃあ、何か困るの?」

 酒の入った宴会が繰り広げられている事もあって、男達は端からアルコールによって倒れている。女性の中にもそう言う人がいるが、全体の割合から見れば比較的まともな人の方が多い……ただし、本当にまともな人は世話を焼く行動に忙しくて子供達の様子にまで目が回らないと言うのが正しい。
 出来たら、子供達は子供達だけで勝手に盛り上がってはしゃいで。ついでにそのまま寝てしまってくれたら楽だと言うのは、偽らざる本音だろう。

「……そうだね、困らないよね」
「困ったら、その時だし」
「前向きって言うんだよね、こう言うの」

 一つの問題が、起きた日だった。
 しかし、その問題は表に出る事は無かった。
 問題そのものが「理解」と言う概念に置いて難しいものだと言うのもあったし、それに加えて子供達も上手く説明出来るとは誰も思って居なかったと言うのもある。
 更に問題として、仮に上手く説明が出来たとしてもどうなるかとかどうしたら良いのかと言うのもあったのだ。

「でも、せっかくだから色々やってみたいな!」